とにかくすごい映画でした。いろんな意味で。
いろんな人が論評してますから、もうわざわざそんなことする必要ないと思いますんで、全校芸術鑑賞会の感想文みたいな感じで。
まず真っ先に思ったことは、やっぱり「文学」ってことじゃないでしょうか。そうでなければ美術作品。アンデパンダン展とかに出てるような。
すごく淡々と、極めて美しく描く、それが骨格。パンフにも覚書が載ってましたね。
印象的だったのは、二郎がとにかく力を尽くして飛行機の開発をしたこと。全力で夢を追いかけたこと。これはとにかくキラキラと輝くくらいに描かれている。
でも、ついにその夢を果たしたこと。これについて全然肯定的に描かれてないんです。
元々、歴史を紐解けばその行く先が何だったのか、どうなったのかははじめからわかり切ってます。だからなのかな、飛行機の名前も、何もかもちっとも出てこない。どうなったか、何があったのかを文脈として踏まえた上で「説明しない」。考えさせる。
そのことで、歴史や時代より「人」あるいはその人生に焦点を当てています。
もしかすると、かつてちょっとお説教臭くなってしまい消化不良に終わったもののけ姫のリベンジなのかも知れませんね。
それと(人によっては全然気にもしないと思いますが個人的には)さらっと描かれるわりに象徴的に映ったのは
「男は仕事してこそ、だ」
とか
「俺達はただいい飛行機を作るだけ」
とかいう周囲の人の言葉。勿論先に触れた二郎の仕事、成果の描き方もですけど。否定してるわけじゃないんですけど、その結果どうなったっけ?って、事ある毎観客に問いかけてる気がします。
それは宮崎駿という人の思想、世界観ですよね。人によって評価が全然分かれるのは、これを受け入れるかそうでないか、ていうことなんでしょうか。
とすれば、誰かが論評した「私小説」という見方を、その意味でまったく、完全に支持します。
さて、感想文の割りには長くなりましたが(笑)、よく「子供向けではない」という意見を聞きます。
まあトトロみたいな解決感胸いっぱいのエンターテイメントではないから分かるんですが、これを子どもたちと見に行けるなら、全然行っていいんじゃないですかね。
あまり幼い子を連れてったらかわいそうかもだけど、小学校高学年以上なら(多少退屈に思うかもしれませんが)むしろ一度観て、歴史をちょっと勉強してみて、また少し大きくなってからもう一度観る、という体験でそのたびに違う何かを感じられる作品なんじゃないでしょうか。
あの圧倒的な美しさの映像が、その条件を充分過ぎるほど充分に満たしてしまっていると思います。映像の印象が強ければ強いほど、理解不能だからこそ「もう一度見てみたい」「どんな内容なのか確かめてみたい」と思わせてくれるんじゃないでしょうか(我々世代にとってはナウシカが限りなくそれに近かった気がします)。
正直、おっさんももう一回観たいです。菜穂子さんで爆死したいです。美しすぎてもう。
おっさんからは以上です。
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