今更ながら鑑賞しました。
新海誠作品最大の売りの美術はもうバッチリ。
更に『秒速五センチメートル』のリア充臭さというか、学生時代非モテだったおっさんや現在進行形でモテない男子学生諸君が胸や喉や頭をかきむしるような恋模様の描写はないので(テーマがそれなのはもうこの人の場合しょうがないw)安心して映像の美しさに没頭できます。
ストーリー部分では、はじめ若干観念的ナー、と思っていたんですが、進むにつれ普通にパラレルワールドを舞台にしたSFとしてすんなり入ってきた感じです。
おそらく舞台設定がマトリックスもびっくりなものだけに展開自体は伏線をきっちり回収しながら起承転結するオーソドックスなものだから、より映像や雰囲気に溺れることができたのでしょう。
つまり、どってことない話です。でもそれがキモなんだよこの人の作品って。
(でもやっぱり中学時代に何かしらコンプレックスを持つ恋愛上の出来事があったんだろなーって勘ぐっちゃうんですけどね)
さて、角度を変えてみると、戦争だ分断だ宇宙だなんだとギミックは出てくるが、世界そのものはごく個人的かつごく物質的に描かれているのが面白い。あまりネタバレになってもいけないのだけど、結局起き変わってしまう外宇宙ってのも「実在している」という点ですべて観念的とは言いがたい。
まぁそれでも『僕の好きなあの子が世界の秘密の鍵を握って苦しんでいるのを知っちゃったので彼女とついでに世界を僕が守っちゃうゾ!』みたいなのはつまりラピュタなんかと同じ構図で、民衆を主導してレーニンになっちゃうアリオンとは違って世界の変え方までごく個人的なのはどうなのかと思わないではないんだけど、この監督の場合もう風景を描くことが目的みたいなとこがあるので登場人物がごく少ないのはもうしょうがねぇのかなと(またか!)w
そこを押さえておけば逆にもうあの落ち着いた雰囲気の映像美に耽溺することができるわけですし、内容的には中高生に夢見させてやるにはいいんじゃないかなとも思います。所謂ジュヴナイルってやつ?
みんな大好き(バルス!)ラピュタだってナウシカだって、世界の変え方じゃなくて単純にあのスリリングな映像スペクタクルを楽しんでいた(いる)のであるから、優れた美術作品を鑑賞するのと同じ目的で子どもたちにも観せてやるべきじゃないか、というのが絵を描く親父としての感想でありました。
ストーリー重視派の罵声はスルーして買っとくかな。
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